結婚する前、私はよくINDIVIとかozoc等の服を着ていました。まあ、普通のOLファッションですね。中でも、クードシャンスの服は大好きでしたね。
こーゆーやつ
しかし、仕事着ばっかりだったから、カジュアルな服をあまり持っていませんでした。
デートとか、合コンも、結局仕事にも着ていけるようなワンピースを着てっちゃってました。
あ、モデルは本人じゃありませんし似ても似つきません。
さて、夫と一緒になってから、彼は時々私の服に口を出すようになってきました。こういうの着て、とか。
彼が着てほしがったのは、Tシャツにジーンズとか、シンプルなドルマンにキュロットとか、カジュアルなものが多く、私にとってもイメージを変えるいいきっかけになりました。雰囲気を変えるのは大好きなので。
これはこれで、「最近感じが変わったね、いい感じ」人からと言ってもらえました。
しかしある時から、夫はちょっとガーリーなファッションを勧めてくるようになりました。淡い色の短いスカートとか。ちょっと恥ずかしかったけれど、はっきし言ってそういうの嫌いじゃない。他の人に会わない時は、そんな服を着てみたりして、ちょっとした冒険をしていました。
ミッシュマッシュとかレッセパッセみたいな…
そんなある日、ウィンドウショッピングをしていたら、夫がとあるショップの服を指さし私に「あれ似合いそう」と言ったのでした。
アメーバマーズ
いや似合わねえよ。
見てみろよ店員の姉さんのクルクルした毛を。あれは違う宇宙から来た人たち用のおべべなんだよ。
「そう言わずにさ、一回着てみなよ」
なんだ、なんでだ。堅実なあんたがなぜここでチャレンジ精神を発揮するんだ。
いやいや。
そうだ。
何事も挑戦する前に諦めるのはよくない。もしかしたら、もしかしたら…似合うのかもしれない。あの短いスカートから見える文字通り太い太ももがムチムチして色っぽいのかもしれない。ショートカットとのミスマッチが逆にギャルっぽいかもしれない。
不安だらけになりながらも、私はMA*RSの服を着て恐る恐るカーテンを開け、夫の前に現れた。
「見てごらんよ、似合うよ」
「え、そ、そうかな」
「うん、鏡を見てごらん」
「え…?これが・・・わたし・・・
・・・
・・・
似合ってねえよ」
「いや無理無理無理無理」
私はその服を買うのを拒否した。
だがしかし、私は数日たって、少し後悔していた。
自分に似合うものって、だいたい自分より人の方がわかっているものだ。どうして人のアドバイスを無視してしまったのだろう。新しい自分を見つけるチャンスだったかもしれないのに。髪がクルクルしていないから似合わないのなら、今からクルクルすればいい。カラコンだってつければいい。
私は再び店を訪れた。
・・・いっぱい言い訳をしながら服を選んだ。
「あ、あの、ちょっとクリスマスも近いしパーティーで着てみようかなって、身内だけの。家の中だけで1回だけ着るんで、あれですけどね、ええ、あの、ちょっと抑え気味なやつ、何かありましたらば…」
店員さんはいささか同情したようなあいまいな笑顔ながらも、「いえいえ、いるんですよ〜おうちでコスプレしたくて買われる方も」とフォローしてくれた。
いないだろ?
そして、中でも一番スカート丈が長くて、なんとかギリギリ着られると思うものを買って、その夜、夫を待ち構えた。
玄関の扉を開くと目を丸くして夫は言った。
うわあ、よくそういうの着るね!
てめーが@をあいえうふぁえ
数年たったある日だった。モールで買い物をしていると夫が指さした。
ああいうの、いいね。
アクシーズファムかよ・・・
ふり幅でかすぎじゃね?同じベクトルの南極から北極にいったね?
だがしかし。MA*RSに比べるならば、何倍着やすいことか。
ここの服なら、買える。言い訳なんかしなくても、買える。
ワンセット試着すると夫は言った。「ここの服、よく似合うね。カード作って帰ろうよ!」
私たちは axes femme のスタンプカードを作って帰った。
それからたまにここを通ると私は服を買って夫を喜ばせたい、なんて衝動に駆られる。
でも立ち止まる。
MA*RS事件を思い出すのだ。
そして好みがカジュアル→ガーリーカジュアル→派手→ヴィンテージ風フェミニンと流れてきたこと。
そろそろレトロポップあたりを狙った方がいいのではあるまいか。
私は素通りする。夫を喜ばせたいという思いは十中八九空振りに終わるのだ。