吠える主婦の絵日記

育児マンガとどうしようもない独り言。お気軽にコメントください!

私が見た神接客(後編)

その男は、イケメンだった。

芸能人に例えると…思いつかないから同じようなラインでTAKAHIROとしよう。

TAKAHIROは、私が最初に担当してもらっていた、産休に入ったあの美容師と同じ美容院に勤めていた。
私が様々な美容院をめぐっていい人に出会えず、再びこの美容院に戻ってきたときに出会ったのだ。

一時ブランクはあったものの、長年通っていた私はそれなりにいい客だったと思う。
そのためか、TAKAHIROはよくしてくれた。
さすが、有名店だけあって、おしゃれでトーク上手、うそっぽくない程度に持ち上げてくれたり話を聞き出したりしてくれた。

ただ、私は正直、別の美容師を狙っていた。
ある時、TAKAHIROの予約がとれなかったときに切ってくれた彼はすばらしい腕で、これだという髪型にしてくれたのだった。私はスキをうかがって、なんとなくそっちの美容師さんに移りたいな、などと考えていた。そんなある日のこと。
予約を入れようとすると、TAKAHIROはその日、別の仕事で店にいないという。
私は多忙を装って、「ほかの方でいいです」と伝え、予約通りに美容院に行き、待合場所で雑誌を読みながら待っていた。

その時、気配がした。

TAKAHIROが滑り込むようにしてベンチの横にかけ、顔をのぞき込んできた。

TAKAHIROが。

顔をのぞき込んで。

大事なところだから2度いう。

TAKAHIROが。

そしてこう言った。

時間、作ってきたから

彼はこう言ったのだ。
「(上客逃したくないから)時間作ってきた」と。
でも当然こう脳内変換されるよね。

「本当は大事な仕事があって、
ここに来るときも担当ディレクターに
『HEY、TAKAHIRO、本当にこの大事な仕事を放り出していくのか⁉
TOPになるDREAMを捨てるのか⁉』って言われたけど
『俺のDREAMはあのショートカットにするとはいりになるあの人といることだ』
って言って時間作ってきたから

って変換されるよね。

そんで、彼は前回別の人に切ってもらった髪を見て、

「ふ〜ん、〇〇君に切ってもらったんだ」ってちょっとフテた感じで言っちゃってね、
でも「ふ〜ん、〇〇とデートしたんだ?へぇ」って聞こえるよね。

結婚するって話した時なんか、
「へぇ…いいな、僕の運命の人はどこにいるのかな…」ってそっぽ見ちゃったからね。
天才だったね。
仕方ないよね、客と店員って現代のロミオとジュリエット並みに手出しちゃいけないからね。もう禁断の恋ってここにしか残ってないだろってくらい禁断の恋だからね。

っていうかこれもうホストクラブ通いだよねーーーーーーーー!!!

だよね、そうだよね、私、その事実から目を背けきれなかったわ。
私これ、髪切りに行ってるんじゃなくてホストに会いに行ってますごめんなさい神様
でもホストクラブにしてはコスパがいいよね、いっちゃうよねーーーー!

そんなわけで、引っ越してからもう当分ここには行ってませんが、
数年の間、私はそれはそれは楽しい美容院生活を送っていたのです。

もうすっかり、「君のために来たよ」なんか言われても、
片鼻抑えて「ぷひーーーっ」って笑っちゃいそうなほどいろいろ縁遠くなった今でも、
あの疑似恋愛つきの接客にはもう一回騙されてもいいわと思う夏の終わりの午後のひと時なのでした。

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